安全在庫とは?

安全在庫とは、予測より需要が増えたり、入荷が遅れたりしたときの不足を緩和するために持つ予備の在庫です。通常の販売・使用を賄う在庫とは役割が異なります。多く持つほど欠品リスクを抑えやすくなる一方、保管費用や期限切れの負担が増えます。

安全在庫は通常の需要を賄う在庫に加える変動への備え。需要の増加や入荷の遅れによる不足を緩和するが、欠品ゼロを保証するものではない。

計算の前に条件を決める

  • 対象の商品・拠点・数量単位。
  • 発注から使える状態になるまでの調達期間。
  • 需要と調達期間の変動を測る期間。
  • 欠品の影響と、目標とするサービス水準。
  • 毎日確認するか、週1回など定期的に確認するか。

すべての商品を同じ係数で扱う必要はありません。低価格でも欠けると生産が止まる部品、期限の短い食品、季節商品では重視する条件が違います。ABC分析の金額順位だけで重要性を決めないようにします。

需要だけが変動する場合の計算例

調達期間が一定で、各日の需要が独立で同程度にばらつき、対象期間の需要を正規分布で近似できる場合、次の式が目安になります。

安全在庫=安全係数z×1日需要の標準偏差σ×√調達日数L

例として、1日需要の標準偏差4個、調達期間9日、z=1.65とすると、1.65×4×√9=19.8個。整数で管理するなら切り上げて20個です。これは条件を単純化した説明用の例であり、そのまま全商品へ適用する数値ではありません。

平均需要は別に計算します。1日平均20個なら調達期間の平均需要は180個で、安全在庫20個を加えた発注点は200個になります。安全在庫20個だけで9日分の通常需要を賄うわけではありません。

固定納期の安全在庫の説明例。安全係数1.65×日次需要の標準偏差4個×√9日=19.8個を切り上げ20個。平均需要20個×9日と合わせると発注点200個。

安全係数とサービス水準の意味

正規分布の片側確率を使う例では、90%に約1.28、95%に約1.65、99%に約2.33を用います。この考え方での確率は、補充サイクル内の需要をカバーする水準に関するもので、「注文数量の95%を出荷できる」「年間で必ず95%の日は欠品しない」と同じではありません。

サービス水準を上げるほど予備在庫は増えます。計算上の確率と実際の欠品実績は、予測誤差、分布、発注運用、在庫記録の正確さによって差が出ます。

出典:Oracle NetSuite:サービス水準・安全在庫の計算(2026年10月23日確認)

納期も変動する場合

需要と調達期間の両方が変動する場合、日々の需要の標準偏差だけでは遅延リスクを表せません。独立性などの仮定を置く代表的な近似式は次のとおりです。

安全在庫=z×√(平均調達日数×需要の標準偏差²+平均日次需要²×調達日数の標準偏差²)

需要増加と納期遅延が同時に起こる、需要が断続的、季節性が強い、最低発注量が大きい場合は単純な近似が合わないことがあります。実際の調達期間中の需要分布や過去の欠品を確認し、必要ならシミュレーションなどで運用を検証します。

需要と納期の両方が変動する場合の近似式。需要変動による項と納期変動による項を足し、その平方根に安全係数を掛ける。需要と納期の独立性などを仮定する。

よくある計算ミス

  • 月次需要の標準偏差に、日数の平方根を掛ける。
  • 標準偏差と平均需要を取り違える。
  • 欠品中の販売ゼロを、そのまま需要ゼロとする。
  • 一度の異常値だけで安全在庫を大きく増やす。
  • 週1回の確認なのに、調達期間だけを保護期間とする。

「最大需要×最大納期-平均需要×平均納期」のような簡便法は、観測した最大値に強く左右され、目標のサービス水準を直接保証しません。平均・標準偏差の式も万能ではないため、採用した方法と前提を記録してください。

Excelで整理する場合

同じ単位の日次需要を並べ、平均と標準偏差を求めます。標本として推定する場合はSTDEV.S、対象データ全体のばらつきを表す場合はSTDEV.Pなど、目的に応じて関数を選びます。ゼロ需要の日と欠測の日は区別し、欠測を勝手にゼロにしないようにします。

安全係数をB2、日次標準偏差をC2、固定調達日数をD2に置く例では、=ROUNDUP(B2*C2*SQRT(D2),0)で整数へ切り上げます。式を入れる前に、固定納期などの前提が成り立つか確認してください。

計算値を運用へ反映する

発注点、発注量、発注残、入荷予定を一緒に管理します。欠品率だけでなく、在庫金額、期限切れ、緊急輸送、発注頻度も確認し、需要や納期が変わったら見直します。

在庫データを発注判断につなげる

販売・購買・在庫をまとめる場合はキャムマックスなどのERP、在庫記録を中心に整える場合は専用の在庫管理システムも候補です。在庫管理に使える10製品の比較で範囲を確認し、発注点の設定・通知・発注残の扱いが標準機能か追加機能かを個別に確認してください。

まとめ

安全在庫は変動への備えであり、通常需要分や発注量とは別です。計算式の前提、単位、サービス水準をそろえ、実際の需要・納期・欠品実績を見ながら調整しましょう。