棚卸とは?数量・状態と記録を確かめる業務
棚卸とは、商品・材料・仕掛品などの数量や状態を確認し、帳簿やシステムの記録と照合する業務です。実物を数えるだけでなく、保管場所、破損や劣化、記録との差異を確認し、その後の在庫管理や金額の確認につなげます。
例えば、システムに100個と表示されていても、実際には別の棚へ移動していたり、未登録の出荷があったりすることがあります。棚卸では「記録上の数」と「確認した実数」を分けて残し、ずれた理由を調べます。

棚卸と日々の在庫管理の違い
在庫管理は、入荷・出荷・移動などを日々記録し、必要な在庫を保つ継続的な業務です。棚卸は、その記録が実物と合っているかを特定の時点で点検する役割を持ちます。棚卸のときだけ帳尻を合わせても、入出庫の登録漏れが続けば次回も差異が生まれます。
数量の確認と金額の評価を分ける
数量が確定しても、在庫金額が自動的に正しいと決まるわけではありません。単価、原価の計算方法、商品の状態などの確認が別に必要です。現場は数量と状態の根拠を残し、経理は金額や評価への反映を確認するという分担を決めます。
棚卸の目的と、実施しないことで起きる問題
| 目的 | 確認すること | 業務に生かす例 |
|---|---|---|
| 在庫記録の精度を確かめる | 実数と帳簿の差異 | 販売可能数や補充判断を見直す |
| 所在と状態を把握する | 棚違い、破損、長期保管品 | 保管場所や商品の扱いを見直す |
| 業務の不備を発見する | 登録漏れ、単位違い、二重処理 | 入出庫や移動の手順を直す |
| 金額確認の資料を整える | 数量、状態、対象範囲の根拠 | 経理の残高・評価確認へ渡す |
実物が少ないのに帳簿が多ければ、販売できると思って受注した後に欠品が判明します。反対に、実物が多いのに記録が少なければ不要な発注につながることがあります。棚卸の結果は残高修正だけに使わず、どの工程で差異が発生したかの改善にも使います。
ただし、差異が見つかった段階で紛失や不正と決めつけないことが重要です。未登録の伝票、棚の取り違え、数え方などでも差異は発生します。調査を進める順番を決め、事実と推測を分けて記録してください。
棚卸の方法|実地棚卸・帳簿棚卸・一斉棚卸・循環棚卸
棚卸の名称は、確認する方法と実施する範囲の違いを表しています。実地棚卸と循環棚卸を対立する方法として扱わず、循環棚卸も実物を数える運用の一つと捉えると整理しやすくなります。
| 区分 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 実地棚卸 | 実物の数量や状態を確認する | 確認日時・場所・単位をそろえる |
| 帳簿棚卸 | 入出庫などの記録から残高を把握する | 記録漏れや現物の状態は数字だけでは分からない |
| 一斉棚卸 | 対象をまとめて一定の期間に数える | 人員確保と入出庫の調整が必要 |
| 循環棚卸 | 商品や区画を分け、計画的に順次数える | 確認漏れと実施周期を管理する |
一斉棚卸では全体をまとめて確認しやすい一方、現場の停止や人員の集中が負担になります。循環棚卸では作業を分散できますが、いつまでも数えない場所が残らないよう、対象一覧に予定日と実施日を残します。
差異が出やすい商品や動きが多い棚を重点的に確認する方法もあります。ただし、重点品だけの点検を全商品の確認と同じ扱いにはしません。目的に必要な対象範囲を明確にし、全体の確認計画と日常の重点点検を組み合わせます。
棚卸はいつ行う?頻度とスケジュールの決め方
実施時期は、決算に向けた残高確認、月次管理、日常の差異対策などの目的に応じて決めます。一律に年1回、月1回と決めるのではなく、商品の動き、差異の発生状況、停止できる時間、必要な資料の提出期限を考慮します。
棚卸当日から逆算して準備する
当日だけ人員を集めても、商品コードが重複していたり、荷物の置き場所が決まっていなかったりすると作業が止まります。対象確定、棚の整理、担当割当て、数え方の説明、帳簿残高の取得、実査、差異調査、承認までを予定に入れます。
| 時期の例 | 準備・作業 | 完了の目安 |
|---|---|---|
| 事前 | 対象・基準日時・担当・記録方法を決定 | 対象外の品や例外も説明できる |
| 直前 | 棚表示、入出庫の登録、機器を点検 | 数える順路と数量単位が明確 |
| 当日 | 実数・状態を記録し未実施を確認 | 対象全体の実施状況が分かる |
| 実査後 | 再カウント、原因調査、承認 | 差異の根拠と反映方法が決まる |
| 反映後 | 残高照合と改善策の確認 | 二重修正がなく結果を追跡できる |
上の表は日程を組むための例です。実査だけでなく、差異調査の時間を確保してください。締め切り直前に数え終わる計画では、原因不明のまま修正を急ぐことになりやすいためです。
棚卸前の準備|対象・時点・単位・担当をそろえる
自社の在庫と、預かり品・外部保管品を区別する
自社倉庫にあるものがすべて自社の在庫とは限らず、自社の在庫がすべて倉庫内にあるとも限りません。預かり品、委託先の保管品、輸送中の商品、検品待ち、返品待ちを洗い出し、現物確認の担当と集計上の扱いを決めます。所有や計上の判断は取引条件を確認し、担当部門で合意します。
同じ基準日時の数量を比較する
朝の帳簿数量と夕方の実数を、その間の入出庫を無視して比べると差異に見えてしまいます。基準日時を決め、記録の更新をどこで区切るかを共有します。棚卸中に動いた商品は、移動日時、数量、移動元・先、担当者を別途追えるようにします。
箱・個・重量などの数え方を固定する
箱単位の販売と個単位の保管が混在する場合は、基準単位と入数を棚卸票へ明示します。開封済みの箱を未開封と同じ扱いにせず、端数を別に記録します。似た商品でも容量や色が違えば別の品目になるため、見た目だけでまとめないようにします。
数える人と確認する人の役割を分ける
作業者、再確認者、差異調査の担当、反映の承認者を決めます。人員が少なく完全な分担が難しい場合も、差異のある品や高額品は別の人が確認するなど、重点的なチェックを設けます。
棚卸のやり方|準備から承認・反映までの6ステップ
1.対象リストと現場の場所を対応付ける
倉庫・区画・棚番を順路に沿って並べ、誰がどこを担当するか決めます。リストにない現物が見つかった場合の追加記入欄も用意します。リストだけを見ると未登録品を見落とすため、現場にあるものからリストへ照合する視点も必要です。
2.商品と単位を確認して実数を記録する
商品コード、棚番、必要ならロットを確認してから数えます。帳簿の数字に合わせるのではなく、実際に確認した結果を残します。必要に応じて、作業者に帳簿数量を見せずに数える方法も検討します。
3.未実施・二重カウント・状態を点検する
数えた場所には実施済みの印を付け、未実施区画が残っていないか確認します。空欄をゼロとして集計すると未確認品を見落とすため、実施状況を独立した項目で管理します。破損品や保留品は通常品と分けて状態を記録します。
4.差異を再カウントし、取引の記録を調べる
数え間違い、棚違い、単位違いを確認してから、入荷・出荷・返品・移動の記録へ進みます。関連伝票をたどれるよう、調査の結果と根拠を残します。原因が分からない場合も、調べた範囲と未解決事項を記録します。
5.責任者が反映方法を承認する
通常の取引の登録漏れを直すのか、棚卸調整として残高を修正するのかを決めます。作業者が独断で数量を上書きする運用は避け、理由、修正量、根拠、承認者が追える状態にします。
6.反映後の残高を照合し、再発を防ぐ
反映前後の数量と処理結果を確認します。訂正済みの伝票を後から二重登録しないよう、関係者へ処理内容を共有します。差異が集中した棚や工程を振り返り、次回までに直す手順と担当者を決めます。
棚卸シートに必要な項目と記入例
棚卸シートは、現物の確認結果と差異調査の根拠を残すための記録です。紙やExcelを使う場合も、商品名と数量だけでなく、どこで・いつ・誰が・どの単位で確認したかを追えるようにします。
| 項目 | 記入例 | 記録する理由 |
|---|---|---|
| 基準日時・確認日時 | 10月31日18時/同日18時10分 | 比較時点と実際の確認時刻を区別 |
| 倉庫・棚番 | 本社倉庫/A-01 | 同じ商品の別の保管場所を区別 |
| 商品コード・商品名 | P001/商品A | 似た商品の取り違えを防ぐ |
| 単位・入数 | 個/1箱10個 | 箱と個の混同を防ぐ |
| 帳簿数量・実数 | 100個/98個 | 確認前の記録と実査結果を保持 |
| 状態・実施状況 | 通常品/確認済み | 未確認とゼロを区別 |
| 差異理由・根拠 | 出荷伝票の未登録/伝票番号 | 調査結果を追跡 |
| 担当者・確認者・承認 | 記入者と確認日 | 修正の責任と履歴を明確にする |
記入例は架空のものです。ロット・期限の管理が必要なら、それらも追加します。単価や評価金額は現場の実数入力欄と分けると、数量確認と経理の判断が混ざりにくくなります。
Excelでは入力欄と計算欄を分ける
商品コードを文字列として扱い、先頭のゼロを落とさないようにします。実数などの入力欄と差異の計算欄を色分けし、計算式を誤って消さない設定にすると運用しやすくなります。複数人で作業する場合は担当区画を分け、統合するファイルと責任者を決めます。
シートの作成時は、空欄の実数をゼロとして差異計算しないことが大切です。「未確認」「確認済み」「再確認待ち」などの状態を持たせ、確認済みの行だけを集計対象にします。作成手順やExcelの数式は、基本的な棚卸業務とは分けて整備すると担当者が参照しやすくなります。
棚卸差異の計算と原因調査の進め方
ここでは棚卸差異数量=実数-帳簿数量と定義します。マイナスは実数が少なく、プラスは実数が多いことを表します。システムによって表示の符号が逆の場合もあるため、差異欄の定義をそろえてください。
仮に帳簿が100個、実数が98個なら、差異は98−100=−2個です。ただし、この時点では「2個なくなった」とは断定できません。再カウント後に出荷記録を調べ、2個の出荷が未登録だと分かれば、その出荷を正しく記録する方法を検討します。

出荷の登録で帳簿が98個になった後、同じ原因についてさらに棚卸調整で2個減らすと二重修正になります。差異調査と残高反映は一つの記録でつなぎ、何を直した結果、どの残高になったかを確認します。
| 調査順の例 | 確認すること |
|---|---|
| 再カウント | 別の担当者による実数、開封箱や端数 |
| 場所・識別 | 隣の棚、別倉庫、似た商品、ロット |
| 単位 | 箱と個、入数、重量などの換算 |
| 時間差 | 棚卸中の入出庫、締め後の追加登録 |
| 取引記録 | 未登録・重複の入出庫、返品、移動 |
| 状態 | 破損、保留、廃棄予定と処理記録 |
差異の大小だけでなく、同じ原因が繰り返されていないかも確認します。修正の具体的な記録方法は在庫調整の解説、倉庫間の動きを追う方法は入出庫管理の解説など、作業別の手順へ分けて管理すると改善を続けやすくなります。
棚卸中も入出庫を続ける場合の注意点
可能であれば対象区画の入出庫を止めて数えます。営業を止められない場合は、区画ごとに時間を区切る、棚卸中の移動を専用の記録へ残すなど、比較時点を合わせる方法が必要です。
実数確認の前後に動いた商品について、数える前に出たのか、数えた後に出たのかが分からなければ差異を説明できません。作業者がその場で移動を把握できるようにし、出荷場や仮置き場も対象から漏らさないようにします。
物流拠点から実績が遅れて届く場合は、現場の確認時刻とシステムへの反映時刻を区別します。連携が完了していないまま残高を比較しないよう、締めの担当者が未処理データを確認します。
棚卸を効率化する方法|探す・数える・転記する作業を減らす
棚表示と商品識別を整える
商品を探す時間が長いなら、機器の導入前に棚番とラベルを整えます。通常品、返品、保留品を混在させず、置き場所のルールを共有します。棚卸の前だけ片付ける運用より、日々の入出庫で場所を記録する方が継続しやすくなります。
読み取りと入力を現場で完結させる
スマートフォンやハンディ端末は、商品や棚を識別し、その場で結果を入力する手段になります。ただし、バーコードを読めば数量も正しいとは限りません。ケース入数、端数、ラベルのない品、通信できない区画を試してから運用に組み込みます。
例えばzaicoの公式案内には、スマートフォン等を使った棚卸の機能が紹介されています。導入時は自社の商品・数量単位で入力から差異確認まで試し、必要な機能が契約プランに含まれるか確認します。
出典:zaico:棚卸機能(2026年10月26日確認)
再カウントが多い原因を先に減らす
作業速度だけを追うと、記入ミスが増えて差異調査に時間を取られる場合があります。実査、転記、再確認、原因調査を分けて所要時間を測り、どこに負担が集中しているかを見ます。前回と比べるときは、対象品目数や区画、担当人数もそろえて評価します。
棚卸システムの選び方と導入前の確認項目
| 比較する項目 | 実際に試すこと |
|---|---|
| 対象と識別単位 | 複数倉庫、棚、ロット、状態別に数えられるか |
| 進捗管理 | 未実施・確認済み・再確認待ちを区別できるか |
| 入力方法 | 端数品、箱と個、読み取れないラベルへの対応 |
| 履歴と承認 | 変更前後、担当者、理由、承認を追えるか |
| 反映方法 | 実数入力で直ちに上書きするか、確認後に反映するか |
| 連携 | 入出庫や移動の途中データをどう扱うか |
| 運用と費用 | 端末、利用者、支援、連携の追加費用は何か |
棚卸の記録だけを効率化するなら在庫管理アプリ、倉庫内の作業まで整えるならWMS、販売・仕入・会計までつなぐならERPも候補です。機能の名前より、棚卸前の残高取得から承認後の反映まで通して試せるかを重視します。
まず一区画で試し、通常品に加えて差異品、端数品、返品保留品を扱います。紙での代替記録、通信障害からの復旧、入力のやり直しも確認し、実運用に必要な手順を整えてから範囲を広げます。在庫管理システムの比較も候補整理に活用できます。
棚卸業務におすすめの業務システム5選
キャムマックスを先頭に、棚卸業務に関連する業務を扱う製品を紹介します。掲載順は性能や価格の順位ではありません。各製品の対応範囲やプランを比較し、自社に必要な構成を選んでください。
キャムマックス
初期費用:100,000円
月額費用:90,000円~
初回1ライセンス・5アカウント。生産管理・外部連携等は別料金。
キャムマックスは、販売・購買・在庫・倉庫・会計を一元管理するクラウドERPです。現物の在庫記録だけでなく、受注・仕入・請求まで同じデータでつなぎたい企業に向きます。
比較のポイント:初回1ライセンス・5アカウント。生産管理・外部連携等は別料金。
出典:キャムマックス 公式情報(2026年10月23日確認)
クラウドトーマス
初期費用:個別見積
月額費用:個別見積
製品構成、端末、倉庫、連携、個別開発・導入支援を含めて見積もり。
クラウドトーマスは、物流現場の入出荷・在庫・棚卸を管理するWMSです。保管場所やバーコードを使って作業を記録し、OMS・基幹システムとCSV/APIで連携。現行の製品構成では、クラウドトーマスProなどから業務規模と必要な個別対応に合わせて選びます。
比較のポイント:製品構成、端末、倉庫、連携、個別開発・導入支援を含めて見積もり。
出典:クラウドトーマス 公式情報(2026年10月23日確認)
LOGILESS(ロジレス)
初期費用:0円
月額費用:20,000円~
EC事業者向けライト。1倉庫・月300出荷まで。超過・オプション別。
LOGILESSは、ECの受注管理(OMS)と倉庫管理(WMS)を一体化したクラウドサービスです。受注処理から出荷指示までをつなぎ、在庫・ロケーション・ロット・賞味期限も管理。料金は基本料金と出荷件数に応じた従量料金で決まります。
比較のポイント:EC事業者向けライト。1倉庫・月300出荷まで。超過・オプション別。
出典:LOGILESS(ロジレス) 公式情報(2026年10月23日確認)
zaico
初期費用:個別見積
月額費用:0円/有料8,980円~
無料は人数・機能制限あり。有料スターターはフル3名・閲覧10名。
zaicoは、スマートフォンとパソコンで在庫数・入出庫・棚卸を管理するクラウドサービスです。無料プランのほか、スターターは月額8,980円、ベーシックは月額49,800円(税抜)。ロット・期限管理や複数拠点管理はプランで異なります。
比較のポイント:無料は人数・機能制限あり。有料スターターはフル3名・閲覧10名。
出典:zaico 公式情報(2026年10月23日確認)
アラジンオフィス
初期費用:個別見積
月額費用:個別見積
業種別機能、導入形態、人数、カスタマイズ、保守で変動。
アラジンオフィスは、販売・購買・在庫を中心に企業の取引業務を管理するパッケージシステムです。業種別の機能やカスタマイズに対応。出荷指示・ロット管理・会計連携などはオプションを含めて構成を選びます。
比較のポイント:業種別機能、導入形態、人数、カスタマイズ、保守で変動。
出典:アラジンオフィス 公式情報(2026年10月23日確認)
まとめ
棚卸は、商品を数えるだけでなく、実物と記録の差異を調べ、在庫管理を正しく続けるための業務です。対象・時点・単位をそろえ、未実施とゼロ、通常品と保留品を区別することが精度を支えます。
転記や再カウント、差異調査に負担がある企業は、棚卸シートと棚表示を整え、実数入力から承認・反映まで追える仕組みを検討しましょう。差異の原因を日々の入出庫へ戻して改善することが、次回の棚卸を楽にします。




