EDIとは?
「EDI(Electronic Data Interchange)」とは、企業間の取引で発生したビジネス文書をデータ化し、インターネット回線を通じてやり取りすることです。従来おこなわれていた紙ベースでのやり取りと異なり、取引情報の送受信からデータの変換・連携まで自動でおこなえるため、高速処理かつ低コストという特徴をもちます。
EDIの仕組み
EDIは、異なる基幹システム同士でデータを送受信するため、他社から送られてきたデータを自社システムの形式に変換する必要があります。よって、EDI取引を行う際は、通信方法やデータの形式などを、規格として事前に定めることが大切です。また、同じ通信方式を取り扱える回線の用意も必要です。EDIの主な規格としては、日本チェーンストア協会(JCA)によるJCA手順や、銀行業界による全銀TCP/IP手順などがあります。
EDIとEOSの違い
「EOS(Electronic Ordering System)」とは、EDIの一部の仕組みを用いたシステムです。主にスーパーマーケットや小売店で、商品の発注や請求処理の管理に使用されます。EOSは、1970年代に導入されましたが、EDIが拡大した結果、1990年代にはEDIがEOSに取って代わられるようになりました。EDIとの大きな違いは、発注業務に特化している点です。これに対しEDIは、出荷から納品、請求、支払いまでの一連の流れを取り扱います。
EDI2024年問題とは
EDI市場に大きく影響を及ぼしているのが、NTT東西が発表した、2024年1月に実施されるINSネット(ISDNサービス)終了およびIP網への完全移行です。INSネットは、通信速度や品質、信頼性の高さから、電話やFAXのみならず、EDIシステムの通信においても広く利用されてきました。しかし、IP網への移行を機に、業界はEDIシステムの刷新を余儀なくされています。移行後のIP網では、これまでのEDI取引は実行できないことが明らかになっているからです。これらINSネットからIP網への移行に伴い生じる弊害を総じて「EDI2024年問題」と言います。
EDIの種類
EDIは、システムの設定内容により次のように分類されます。
個別EDI
「個別EDI」とは、取引先ごとに通信形式や識別コードなどを定める方法です。個別仕様になっているので、双方のシステムに合わせた細かな設計ができる反面、それぞれの仕様に応じたデータ変換システムを用意する必要があるため、使用にあたっては取引先が少ない場合に限定されます。
標準EDI
「標準EDI」とは、複数の取引先でデータ形式や識別コードなどの設定を共有する方法です。規格が標準化されているため、利用企業は、標準の規格と自社システムをつなぐデータ交換システムを用意するだけで、複数の企業と取引を行うことができます。標準EDIは、現在最も多くの企業で利用されています。
業界VAN
「業界VAN」とは、特定の業界に特化した仕様のEDIシステムです。業界共通の商品コードや取引先コードが定められており、複数の同業他社との取引をスムーズに行うことができます。業界VANの代表例としては、貿易業界で利用されているNACCSや、医療品業界のJD-NETなどがあります。
EDIのメリット
EDIの導入はさまざまな恩恵をもたらします。具体的なメリットについて見ていきましょう。
データ処理の自動化
社内の基幹システムをEDIと連携することで、取引データの取り込みや生成、送受信が自動化されます。例えば、販売管理システムや会計システムと連携すれば、自社で入力した情報をもとに、必要な書類を自動生成したり、これまでメール添付していたデータを、EDIを介して自動で送信できるようになります。これにより、業務にかかる手間を削減し、取引をよりスピーディに進めることが可能になります。
業務効率の向上
EDIを導入することで、これまで人の手で行われてきた業務が削減され、業務効率の向上につながります。また、EDIの効果は在庫管理の場面でも発揮されます。EDIを利用すれば商品の少量発注や納品条件の細かい指定が可能になり、急な欠品に対して臨機応変に対応することができます。この点は、流通業界に限らず、食品業や日用品業など、あらゆる業種において注目されています。
データの正確性向上
EDIは、取引データを自動で取り込むことができるので、手入力による負担を大幅に減らすことができます。すなわち、人的ミスを減らし、取引データの正確性を確保します。これにより、取引先の信頼性を獲得するほか、内部統制のスムーズな遂行をも可能にします。
ペーパーレスによる経費削減
EDIは、電子データで情報をやり取りするので、書類の印刷や郵送・FAXによる手間がかかりません。加えて発送費やファイリングにともなう保管費用、人件費の削減につながります。
EDIのデメリット
EDIの利用にあたり障害となるのは、通信環境の整備です。具体的に見ていきましょう。
自社と取引先で互換性のあるEDIを導入する必要がある
EDIでデータを確実にやり取りするには、専用の通信環境を整備しなければなりません。しかし、通信環境の整備には少なからぬ費用がかかります。取引件数が少ない小規模な企業にとっては、費用対効果を考えると、EDIの導入がかえって足かせとなってしまう恐れがあります。また、EDIはあくまで円滑な取引データのやり取りを目的とするものなので、コストカットが可能な反面、売上げアップにはつながらない点を認識しておく必要があるでしょう。
WebーEDIとは?
「WebーEDI」とは、インターネットとWebサーバーを利用して、企業間でデータをやり取りする手法のことです。EDIを利用するには専用の通信環境が必要ですが、Web-EDIであればPCとインターネット回線さえあれば良いため、小規模な企業でも手軽に開始できます。そのためWebーEDIは、これまで普及の進まなかった中小企業にも、新しい取引手段として急速に広まっていきました。クラウドERPなどのシステムで対応が可能です。
EDIとWeb-EDIの違い
大きな違いは、インターネットを介する点です。従来のEDI取引では、ISDN(固定電話回線)を用いることが一般的でした。しかし、EDI2024年問題で触れたとおり、ISDNサービスは2024年1月で終了してしまいます。インターネット回線を用いるWeb-EDIは、その解決策として注目を集めています。また、インターネット回線は、専用回線と比べて通信速度が速く快適であることや、画像や漢字データの取り扱いが可能という点も違いとして挙げられます。
Web-EDIの特徴
Web-EDIには、大きく2つの特徴があります。
ブラウザ上で操作可能
専用システムの場合、PCの入れ替えやアップデートの際に、自社システムが問題なく稼働するかを慎重に確認する必要がありました。ブラウザ上であれば、PCの仕様を考慮する必要がなく、利用者は使い慣れたブラウザで操作するため、システム利用者の作業負担を軽減することができます。
クラウドでの提供
Web-EDIは、クラウド環境をベースに構築されています。従来のEDIでは、定期的なアップデートやメンテナンスを利用者側が行う必要がありました。クラウドであれば提供元がそれらの作業を行うため、利用者側はシステム維持の手間を気にすることなくEDIを利用することができます。
Web-EDIのメリット
Web-EDIにはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下くわしく見ていきましょう。
低コストでの導入・運用が可能
Web-EDIは、専用システムをインストールする必要がありません。システムの定期的なメンテナンスも不要です。したがって、初期費用や維持費用を低く抑え、無駄なコストを生じることなく運用することができます。電話回線ではなく、インターネット回線を用いる点も、コスト削減の一助になっています。
導入までが早い
Web-EDIは、ほとんどがクラウドベースのシステムなので、専用システムに比べてスピーディーに利用を開始することができます。はじめてEDIを利用する企業であれば、まずはお試しで最低限の機能を利用してみて、そこから徐々に拡大していくといった利用方法も可能です。
セキュリティの担保
最新のセキュリティ対策を取れることも、Web-EDIのメリットの一つです。インターネットの暗号化通信は日々進歩しており、従来の専用回線では対応していなかった他サービスとの連携も、インターネット通信であれば今は可能です。電子証明書による認証を導入すれば、パスワード認証よりもさらに強力なセキュリティ対策ができるようになります。
まとめ
EDIの導入により、企業は取引にかかる業務負担を大きく削減できます。反面、EDIの利用にあたっては専用システムの整備が必要となり、取引規模の小さい中小企業にとってはメリットが少なく、導入がすすまないという実態がありました。
しかし、近年ではWeb-EDIの登場により、EDIに対する敷居が低くなりました。導入にあたっては、自社のシステム環境を踏まえた検討が必要なものの、取引の迅速化やコストを削減できる点は魅力的です。EDIの活用により、企業間のやり取りをよりスムーズにして、業務の効率化に役立てましょう。